中国、鉄鋼輸出に許可制を導入へ 新興国との貿易摩擦緩和が狙いか

中国政府は先ごろ、約300品目の鉄鋼製品を対象に、2026年1月1日から輸出許可制度を導入すると発表しました。この動きは、特に東南アジアやラテンアメリカなどの新興国との間で高まる貿易摩擦を緩和しようとする、中国政府の明確な意思表示とみられています。

この政策を理解するには、今年の中国の貿易状況という広い文脈で捉える必要があります。世界的な保護主義の強まりにもかかわらず、中国の輸出は驚くべき回復力を見せています。サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙の分析によると、2025年の最初の11ヶ月間で、最大の輸出先である米国への出荷は前年同期比で18.3%減少したものの、中国の総輸出額は6.2%増加しました。これは、中国企業の適応力だけでなく、輸出戦略の意図的な再調整を反映しています。

この回復力の一因は、電気自動車（EV）、バッテリー、太陽光発電設備といったハイテク製品の輸出好調にあります。しかしそれと同時に、東南アジア、アフリカ、ラテンアメリカといった新興市場への軸足のシフトも極めて重要でした。これらの市場は先進国からの逆風が強まる中で、中国の輸出エンジンを維持できるかどうかを左右する存在になりつつあります。

しかし、これらの新興国との関係は次第にデリケートなものになっています。多くの国は中国に対して公然と敵対的な姿勢はとっていませんが、貿易摩擦が積み重なっていることは明らかです。その中でも、鉄鋼は最も目に見える火種となっています。

今回の輸出許可制度は、単なる貿易管理措置にとどまりません。これは、中国が「グローバル・サウス」との関係を重視し、従来の「量」を追求する輸出戦略から、貿易摩擦を管理し「質」を重視するパートナーシップへと移行しようとしている大きな潮流の一部と分析できます。今後、他の産業分野でも同様の管理強化の動きが見られる可能性があります。