中国恒大集団に清算命令、香港裁判所が判断 ― 巨大不動産危機の新局面に
香港の裁判所が、負債総額3000億ドル超の中国不動産大手、恒大集団に清算命令を下しました。世界最大級の債務再編の行方と中国経済への影響を解説します。
核心の出来事
香港の高等法院は2025年12月22日、世界で最も多くの負債を抱える不動産開発会社、中国恒大集団(チャイナ・エバーグランデ・グループ)に対し、清算を命じる判決を下しました。総額3000億ドル(約45兆円)を超える負債を抱え、中国の金融システムを揺るがしてきた同社の経営危機は、これで新たな、そして不確実な局面に入ります。
判決の背景と市場の反応
リンダ・チャン判事は、恒大集団が実行可能な再建案を提示できなかったことを理由に、清算命令を下しました。この決定は、2022年にトップ・シャイン社によって申し立てられた清算請求に基づくものです。判決を受け、香港証券取引所では即座に中国恒大集団(3333.HK)の株式取引が停止されました。同社の株価は、取引停止前に20%以上も急落していました。関連会社である恒大汽車(0708.HK)および恒大物業(6666.HK)も同様に取引停止となっています。
今後の課題:国境を越える資産回収
この清算命令は、香港の司法制度と中国本土の司法制度間の相互承認に関する重要な試金石となります。清算手続きは香港で開始されますが、恒大集団の資産の大部分は中国本土に存在します。海外の債権者が、法制度の異なる本土で資産をどこまで回収できるかは極めて不透明であり、専門家は「長く複雑なプロセスになる」と指摘しています。
恒大集団の蕭紹恩(ショウ・ショウオン)CEOは、「判決には遺憾の意を表明する」としつつも、「香港と本土の事業体は独立して運営されており、住宅プロジェクトの引き渡し完遂に全力を尽くす」とコメントしました。一方、債権者グループを代表するカークランド&エリス法律事務所のファーガス・サウリン氏は、同社が債権者との対話を怠ってきたと指摘し、「今後は資産回収に焦点を移す」との考えを示しました。
PRISM Insight
今回の清算手続きが、中国本土でどの程度実効性を持つかが、今後の海外投資家心理を左右する最大の焦点となるでしょう。海外債権者が本土の資産を差し押さえるプロセスが円滑に進むのか、あるいは大きな障壁に直面するのか。その結果は、中国の投資環境と法的予見可能性に対する国際的な評価を決定づけることになります。これは単なる一企業の破綻処理ではなく、中国市場への信頼そのものが問われる事案です。
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