アカデミー賞、全作品鑑賞が投票の必須条件に。関係者が「1000%嘘をつく」と内部告発

映画界で最も権威あるアカデミー賞が、投票プロセスの信頼性を高めるための大きな一歩を踏み出しました。エンターテインメント・ウィークリー（EW）の12月23日の報道によると、2026年の授賞式から、投票者は自分が投票する部門の全候補作品を鑑賞したことを証明しなければならなくなります。しかし、この新ルールに対し、ある匿名の業界関係者は「投票者が嘘をつく可能性は1,000パーセントある」と述べ、その実効性に早くも疑問を投げかけています。

「見ていない作品への投票」を防ぐ新ルール

これまで、アカデミー賞の投票者の一部が、候補作を全て見ていないにもかかわらず投票していることは公然の秘密でした。EWは、2022年に候補作のほとんどを鑑賞していなかった女優や、今年の調査で作品賞候補の『The Substance』を4人中3人の投票者が見ていなかった例を挙げています。この問題に対処するため、映画芸術科学アカデミー（AMPAS）は4月に手続きの変更を発表。投票者が特定の部門で全候補作を鑑賞したことを証明すると、その部門の投票がデジタル投票用紙上でアンロックされる仕組みを導入しました。

鑑賞の証明は、アカデミー公式のストリーミングプラットフォーム「Academy Screening Room」での視聴は自動追跡され、それ以外の方法で鑑賞した場合は、日時や場所などを詳細に記した自己申告フォームを提出する必要があります。AMPASの幹部、メレディス・シェイ氏は「会員がこの責任を真摯に受け止めていると信じています。人々が嘘をつくとは思いません」とコメントしています。

業界の冷めた視線：「抜け道は存在する」

TVアカデミーやBAFTA（英国アカデミー賞）には既にこのポリシーがあるが、それを監視する方法はない。誰かが本当に全ての映画を見たかどうかを知る術はないのです。

— 匿名の映画賞ストラテジスト

しかし、業界関係者の見方は懐疑的です。ある匿名のアワードストラテジストは、BAFTAなど他の賞でも同様のルールがあるものの、完全に機能しているとは言えず、「監視する方法がない」と指摘。投票者が友人や社会的なメッセージを支持するために、作品の質とは関係なく投票するケースが後を絶たないと語ります。

一方で、別のスタジオキャンペーン担当者は、このルールが一定の効果をもたらすと見ています。例えば、知名度の低い映画の楽曲や音楽がノミネートされた場合、多忙な俳優や監督はその部門の投票を棄権する可能性が高まります。その結果、その部門の専門家である約400人の会員の意向がより強く反映されるようになると予測しています。また、『オッペンハイマー』のような話題作が、作品を見ていない投票者によって技術部門賞まで総なめにする「抱き合わせ投票」が減る可能性も指摘されています。